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【2024/04/18 23:28 】 |
まとめ
まとめ

後半時間が無かったのでほぼひどい台詞のみ
流れ掴むために読んでください
よろしゅう
 …長い夢を見ていたような気がする。

「……ぃちゃ…」

 あぁ、いつもの、あの声が聞こえる。

「……に…ちゃん」

 …もう…いやだ…。

「…きて…ねぇ、おきて…」

「…ねぇ!」

妹「お兄ちゃん、起きてったら!!」

兄「うぉっ!!!!」
兄「なななななななんんだぁぁ!」
兄「何がおこったぁぁぁ!!!」
妹「ねぇ、大変!大変なんだって!」
兄「…何が大変なんだっ!」
妹「私の顔見て!」

 見ないor見る

 …なんだ?
 妹の頭に…
 ネコミミ…?
兄「…俺、夢でも見てるのかな」
妹「夢じゃない」
妹「私も何度もそう思ったけど、夢じゃないの!」
兄「…いや、だって」

 バチーンッ!

兄「ぐぇっ」
 妹の強烈な平手打ちが、俺の右頬にクリティカルヒット。
兄「殴られた…」
 当然痛いし、思い切りやりやがって…ヒリヒリしするぜこんちくしょう。
妹「だって、夢とか言うから」
兄「夢を確認するために殴るとか、もう古いから」
妹「お父さんに殴られるのに比べたら、全然でしょ」
兄「その理屈なら、俺もお前を殴っていい事になるなぁ?」
妹「殴る蹴るとか…お兄ちゃん、野蛮…」
 …いくら妹でも、調子に乗りすぎだぜ…。

 殴るor蹴る


兄「そんな生意気な妹には、おしおきが必要だな」
妹「わー。わたしこわーい、こわいよー。」
 棒読みかよこんちくしょうめ。
兄「どうやら、兄を甘く見ているらしいな」
兄「ふふふ」
兄「…特別に、必殺技である連続三段空中脚でトドメをさしてやろう」
兄「貴様など一瞬で、黄泉への路に急速落下だ…っ!」
妹「それって…ベットで寝そべってる今の状態でできるの?」
兄「……」
 …こいつ、意外と知恵が回るな!?
妹「まぁ、どんな状態でも出来ないだろうけどね」
兄「……」
 …このままではっ
 …兄としての、兄としての…プライドがっ
 プライドがっ…残りカスすらなくなってしまうっ
 由々しき事態だ…!
妹「…ぷっ」
 …畜生っ。
 …妹が笑ってる。
 …目で、口で、声で笑ってやがるっ。
 俺を…この、俺を…っ!

 許す or 絶対に許さない


兄「ところでさー」
兄「そのネコミミはいったいどうしてはえたんだい?」
妹「…あ、話題を変えてきた」
妹「…でも、まぁいいや。元々その件でここに来たんだし」
妹「それがねー、私にも、なんではえてきたか分からないんだ」
兄「…ちなみに、それ…」
兄「ほんもの?」
妹「ほんものほんもの」
兄「検察は証拠品の提出を求めます!」
妹「拒否します」
兄「カンカンッ!被告は検察の言うとおりにすること」
妹「…なに、カンカンッって」
兄「ほら、裁判官のトンカチ」
兄「あれを鳴らしたい為に裁判官になった奴いるのかなぁ…?」
妹「…でも、裁判官になったら使ってみたくはあるね」

 隙を突いてネコミミに触る or 隙を突いてトンカチで叩く

 …さっきから、ひくひく微妙に揺れ動いてるネコミミが気になってしょうがない!
 さわりたい!
兄「隙ありっ!」
妹「…はっ!?」
 ぎゅっ
妹「にゃうっ!?」
 …にゃう?
兄「…なんだその声は」
妹「うううぅ」
妹「いいから、その手を離してよー!」
兄「おぉ、すまんかった」
 妹の言うとおりに、ネコミミから手を離す。
 …しかし。
 ふにっ、とした握り心地で
 さらっ、とした質感で
 ぺこっ、とした感触で…
 なんというか…
兄「これ、ほんものか!?」
妹「だから、本物っていってる…」
兄「マジか」
妹「もいっぺん殴ろうかな」

 殴ってくれ or  殴らないでくれ

兄「もういっそ、殴ってくれ」
兄「…だって、ネコミミがはえるなんてありえないだろ普通」
妹「…とりあえず起きてよ」
妹「殴るのは、それからでも遅くないでしょ」
兄「分かった」
兄「起きよう」
兄「起きて食卓へ行こう」
兄「食卓へ行ってテレビをつけよう」
兄「テレビを付けて」
兄「…実は今日は10年前でしたーーーっ!!」
兄「いやっほぉぉぉぉぉぉおお!!!」
兄「って、オチじゃなければ信じよう」
妹「じゃあ、ご飯の支度するねー」
兄「…うん」
兄「お願いします」


妹「できたよー」
兄「おう」
兄「はやいな」
妹「昨日の夜の残り物だし」
兄「おぉ、そっか」
 …いや、まてよ。
 昨日、あらかたおかずは食べたような…。
妹「召し上がれ♪」
兄「…こっ…これはっ!」
兄「ねねねねねねねね」
兄「ねねねねねねねね」
妹「…どうしたの?」
妹「味噌汁ぶっかけ飯を見ただけで、殿は乱心ですか」
兄「ねねねねねねねねこまんま」
妹「そういえばそうとも言うかもね」
兄「…かもね、じゃなくて…これはネコマンマです」
妹「…で?」
妹「お兄ちゃんは何が言いたいのでしょうか?」
 駄目だ…こいつ、気づいてねぇ
 自分が無意識にネコマンマを作っていることに気づいてねぇ
兄「ところで、何で朝食をネコマンマにしたのかな?」
妹「…なんか、無性に食べたくなって」
妹「目の前にご飯と味噌汁の残りがあったから」
妹「…つい、出来心で…」
兄「…そっか…出来心か…」

 絶対に許さない or 許す

兄「俺は絶対に許さないぞ」
兄「ネコマンマなど、人の口にするものにあらず。ネコが食すものなり」
兄「今すぐ別の食事を要求する」
妹「…なんでよ」
妹「ネコマンマおいしいよずずずずず」
 …さっき盛ったばかりの妹のネコマンマが、もう空に!?
 いつも食べるのが遅い妹が…!?
兄「えぇーい!」
兄「味噌汁ってのは塩分の塊みたいなもんだ!」
兄「塩分の塊である味噌汁をふんだんに吸った飯など食えるか!」
兄「俺に腎臓病になって欲しくなければ今すぐ別の食事を用意しろ!」
妹「えー」
妹「出された食事に文句言うとか何様王様ジャイアン様ですか?」
 とかいいつつ、ちゃっかりネコマンマおかわりしようとしてやがるぜこいつ…!
兄「お前はネコマンマ禁止!」
妹「…はぁ?」
 ギロリ。
 …本気でにらんできてるよー。
 こわいよー。

 勇気りんりん or 夢いっぱーい

兄「…あ、兄の言うことが聞けないってのかよー」
兄「なめてんのかこらやるかこんちくしょうてやんでえ」
妹「…相手にすまい。ずずずずずず」
 …うぅっ。
 人の精一杯の勇気を簡単に流しやがって…。
兄「…わかった。100歩譲ろう」
妹「…ずずずずず」
兄「…しょうがない、1000歩譲ろう」
妹「…しょぼっ」
妹「…めっちゃしょぼいね。ぷぷっ」
 なんだその発言。
 いい加減にしないとお兄ちゃんピキピキしちゃうぞ?
 …いやまて。
 …今、兄としての心の広さが求められているのだ。
 否。試されているのだ。
 ならば、とる行動はおのずと決められてこよう。

 100フィート譲ろう or 100インチ譲ろう

兄「100フィート譲ろう」
妹「…フィート?」
兄「とある国の通貨単位だよ」
兄「まぁざっと本マグロを一尾競り落とせるぐらいの価値だな」
 (ただし2次元に限る)
兄「スイス銀行のお前の口座に振り込んでおく」
 (ただし2次元に限る)
妹「用件を聞こう」
兄「…よし。交渉成立だな。」
 われながら鮮やかな手腕だった。
 さっさと銀座のパブで、キンキンに冷やしたハイボールとしゃれこみてぇぜ。
兄「…いいか、そのネコマンマについて、俺から少し話すことがある」
妹「なんなりと申してみよずずずずず」
兄「……」
 こいつ…食べながら聞く気か。
 そのネコマンマについて話すってるのに…。
 そこまで病みつきになってるってことか。
妹「どうした?遠慮などいらぬぞずずずず」
兄「…いいか、…あくまで、俺の所見だが」
兄「お前の頭に急にはえたネコミミと」
兄「そのネコマンマ」
兄「…関係があると思わないか」
妹「…はっ!?」
兄「気付いてくれたか!?」
妹「ネコミミは、ネコマンマを愛しているのねっ!」
妹「ネコマンマには夫と子供がいるというのに…っ!」
妹「いけないわっネコミミさんっ」
妹「いけなくないよっネコマンマちゃん」
妹「でも、二人の愛はとまるどころか加速していくの愛のマッハ突き…ずずずず」
 …まだ食ってやがる。
兄「…めんどくさいからその辺にして置こうぜ」
妹「あんまり面白くなかったかなぁ…ぐすんずずずず」
兄「ネコマンマを食べるの止められないのか?」
妹「どうも、このニボシとカツオブシの香りが病みつきになってしまって」
 …やはり。
 ネコミミがはえたせいで、妹の味覚がおかしくなったんだな。
兄「そのネコミミはどうやら、本物みたいだな」
妹「冷静に分析してないで、たすけてよーこのままじゃ太っちゃうずずずずず」
妹「ネコマンマうまーい!」

 助ける or たす蹴る

兄「しょうがないなぁ」
兄「…ちょっと、そのネコマンマ貸してみなよ」
妹「えー」
兄「いいからかしやがれぃ!」
妹「あぁーっ!なにをーーっ!!」
 ぽいっ
 びちゃ
 ねこまんまは無残にも生ごみ入れの肥やしとなった。
妹「ねこまんまさまーーーっ!!」
妹「なんてことをーーーーっ!!」
妹「とりかえしがつかないーーっ!!」
妹「10秒前に戻りたいーーーっ!!」
兄「無駄だ」
兄「あきらめるんだ」
妹「あきらめたらそこで終わりなのよーーっ!!」
妹「えーんえんえんえんえん」
妹「えーんえんえんえんえん」
兄「…ええぃ!」
兄「真夏のミンミンゼミよろしく泣くのはよすんだ!」
妹「…ぐすん」

 こんこんと説く or ハンカチを貸す

 涙で頬をびっしょりぐっちょりぬらす妹。
 …しかし、ここで油断してはならない。
兄「いいか」
兄「そのネコミミがはえて」
兄「急にネコマンマが好きになった」
兄「原因はそのネコミミにあるはずだ」
兄「…いいや、絶対、そのネコミミのせいだ」
兄「つまり」
兄「…お前は、ネコミミに洗脳されているんだよ!」
妹「…な」
妹「…なんですってー!?」
兄「分かってくれたか。」
妹「いやぁ」
妹「とりあえず驚いておこうかなって思って」
兄「貴様…!」
妹「もう少し詳しく話してくれないと私バカだしわかんなーい」
兄「自分で自分をバカと言うなよ頼むから」
兄「…まぁそれはいいとして」
兄「自称バカ(笑)の妹ちゃんに、説明してやろう」
妹「先生!」
兄「はい、妹ちゃん!」
妹「おやつは幾らまでですか!」

 うまい棒 or バナナ

兄「20うまい棒までですね」
妹「ちょっと少なくないですか?」
兄「…話を逸らそうとするなよ」
妹「てへり☆」
 畜生。みえみえだけど、ちょっと可愛いぜ。
兄「いままでのことをまとめると」
兄「ネコミミが、急にはえた」
兄「ネコマンマが好きになった」
兄「つまり、ネコミミがはえてネコマンマが好きになった」
兄「要するに、ネコミミがはえたせいで、ネコマンマが止められなくなった」
妹「おぉー」
 パチパチパチ
兄「ご清聴ありがとう。ありがとう。ありがとう」
妹「…つまり、ネコミミが無くならないと、あの異常な食欲もなくならない?」
兄「だな」
妹「ふとる」
兄「そうなるな」
妹「…どうしよう」
兄「…だいたい、どうしてそれがはえたんだ?」
妹「それにゃんだけど…」
 …?
 …にゃんだけど?
兄「どうした?」
妹「あれっ?おかしいにゃ…」
 …にゃ…?

  にゃにぃにゅにぇにょにゃ or にゃんにゃかにゃん

兄「にゃにぃにゅにぇにょにゃ…はいっ!」
妹「にゃにぃにゅにぇにょにゃ…?」
兄「…や、やるな」
妹「…?」
兄「この早口言葉が言えるとは」
兄「…間違いない。」
兄「お前の脳はネコミミに侵食されている!!」
 シャキーン!
妹「なっなんですってー!?」
 ガーン
兄「大変だ。どんどんと脳の言語野がネコミミに侵食されつつある」
妹「どうしてにゃ?」
兄「それだ!」
兄「…どうしてにゃ?…の、『にゃ』だ!」
兄「そのしゃべり方は、ネコミミがはえた女の子の専売特許なんだよ!」
兄「妹であるお前が、リアルにその口癖だったら殴ってるぜ…」
妹「そういう自分は、メールではしょっちゅう変な語尾で…」
兄「なんか言ったか?」
妹「…要するに、このネコミミが、私をネコミミ少女にしようとしてるってこと…?」
兄「そういうことだな」
妹「…それならそれでいいような」
妹「だって、これ可愛いし」

 否! or うむ!

兄「否ァァァッ!断じて否ッ!」
兄「いいか」
兄「そんななりで学校に行けるのか?」
兄「スーパーに買い物にいけるか?」
兄「バイトの面接に受かるか?」
兄「受かるのかよぉぉぉぉ!?」
妹「…お兄ちゃん、バイトの面接落ちまくってるからって…」
妹「…でも確かに、このままだと社会性のない女の子になっちゃう」
妹「だって、見た目痛い子だし」
兄「分かってくれたようだな」
兄「では、そのネコミミを治すために、ネコミミがはえた原因を教えてくれ」
兄「原因が分かれば、もしかしたら解決方法がわかるかもしれない」
妹「…さっき、わからないって言ったよね?」
兄「心当たりもないのか?」
妹「…う」
兄「…あるんだな?」
妹「実は…」



兄「赤…魔術!?」
兄「なんだそれは」
妹「デーモンを操って、願いをかなえる魔術のこと」
妹「エジプトが本場です」
 …デーモンを操る…だと…?。
 あやしい。
 あやしすぎる。
兄「使えるのか?」
妹「これでも一応、初級術士なの」
兄「…初級…術…士?」
兄「あぁ、そうか」
兄「もうそろそろ、そういう設定が好きになる病が発祥する頃だとおもったんだ」
兄「妹ももう中学生だもんなぁ」
兄「大丈夫。時間が解決してくれるさ」
妹「もう!馬鹿にして!」
妹「ちゃんと通信講座で習ったんだから!」
 通信講座…?
 赤魔術の通信講座…?
 怪しさに拍車がかかってきたぞ、おい。
妹「昨日の夜に、教科書に載ってた術を試したんだけどねー」
妹「失敗したとおもってたんだけど…」
妹「ネコミミがはえちゃったのは、やっぱりそのせいかなぁ」
兄「…いったい、どんな術を」
妹「ひみつ!」
兄「…そ、そうか」
妹「ただねー、ちゃんとやるにはデビルの目とか必要なんだけどね」
 デビルの目…?
 そんなものこの世に存在するのか…?
妹「でも、そういう儀式の供物って、基本的に高くって、私のお小遣いじゃ買えないから…」
兄「参考までに、オープンザプライス」
妹「10万円くらいだったかな」
 わぉー。
 妹よ。それは完全に詐欺だよ。
兄「…悪いことは言わない」
兄「すぐにその講座を取るのは止めなさい」
妹「え…」
妹「う、うん…」
 あれ…
 なんか、妹が落ち込んでる…

 ハゲ増す or 励ます

兄「そういえば」
兄「なんか、最近おでこ広くなったかも」
妹「赤魔術で、髪の毛増やしてあげよっか!?」
兄「そんなこともできんの?」
妹「赤魔術はねー、なんでもできるよ!」
妹「デーモンに頼めばなんでもしてくれるの!」
 …おそるべし、赤魔術。
 …おそるべし、デーモン。
 人類の歴史は、ハゲと戦ってきた歴史でもあるというのに。
兄「…じゃあ早速、赤魔術によってネコミミがはえたと仮定して」
兄「ネコミミを治す方法を調べようじゃないか」
兄「魔術が失敗した時の事は教科書にかかれてないのか?」
妹「うーん」
妹「調べてみる」
兄「よし、わかった」
兄「とにかく今は雲を掴むような状況だ」
兄「なんでもいいから、手がかりを探そう」
妹「にゃ-い!」
兄「おっ!?」
妹「…はぅっ」
妹「はずかしい…」
 顔真っ赤にして…
 妹も可愛いところあるんだな…
兄「…よし、さっさと片付けちまおうぜ」
兄「妹の部屋に行けばいいか?」
妹「う、うん!」

 …
 ……

兄「どうだ?」
妹「…だめにゃ」
兄「そうか…」
 すっかりネコ語になってきたな…
 こりゃ、本格的に妹の脳がネコミミに侵食されてきたってことか…。
妹「術に失敗したり、術を悪い事につかったら、悪いことが起きるっていうのは書かれてるんだけど…」
妹「どうやって解決したらいいかまでは書いてないにゃ…」
兄「どれ、俺にも見せてみてくれ」
妹「わかったにゃ」
  妹から『人生を最高でハッピーにするための赤魔術講座Ⅰ』とゴシック体で表紙に書かれた本を受け取る。
 かわいらしくデフォルメされたツタンカーメンキャラが、表紙にポップな色を沿えている。
 色々と突っ込みを入れたくなる題名と合わさって、非常にうさん臭さを4乗5乗にもしている。
 全部で100Pくらいだろうか。中身を開いてみると、なんと最近流行の萌え系参考書顔負けぐらいに、漫画絵を満載させていた。
 デーモンちゃんとツタンカーメン君のやりとりで、赤魔術の基本構造から初級術式、タリスマンの書き方までが分かりやすく説明されている。
 …おぉ、これなら活字嫌いの俺にもできそうだ。
 …って、俺が洗脳されてどうすんだ。
兄「おい、昨日使った術は、どこに書いてあるんだ?」
妹「えっと…」
妹「うーん」
兄「どうした?」
妹「えっとー。あのね」
妹「昨日使ったのは…私のオリジナルなんだにゃ…」
兄「オリジナル!?」
妹「う、うん…」
兄「まだ習いたてなんだろ、そんなのできるのか?」
妹「…で、できるにゃ!」
 妹の態度がなんか不自然だな。
 …あやしい。

 追求する or 深く聞かない

兄「ほぉ」
兄「じゃあ、どんな術を使おうとしたんだ?」
妹「えっとね」
妹「んっとね」
妹「…幸せになる術にゃ!」
兄「…なんだか、漠然としてるな」
妹「ま、まあね」
 …何か隠しているのは間違いないな。
 今はいいが、後できっかり聞き出してやる。
兄「まぁいいや」
兄「…とりあえず、ネコミミを治す方法は、今のところまったく分からないわけだ」
妹「そういうことになるかにゃん」
兄「…なら」
兄「徹底的に色々試してみるか」
妹「徹底的って…」
妹「ちょっと怖いにゃ…」
兄「心配ない」
兄「兄に任せなさい」
妹「根拠が無い自身ほど、怖いものはありません」
兄「借金の保証人になるほうが俺は怖い」
妹「…確かに」
妹「でも…」
兄「いいか。俺は楽しそうとか、面白そうとか、暇だからとか」
兄「そういう理由で、妹を助けようとしているわけじゃないぞ」
兄「なにより、妹が可愛いからに他ならない」
妹「わたしが…」
妹「可愛い…」
妹「…ポッ」
兄「あぁ。だから、どんな手段を用いても、俺がそのネコミミの侵食から、妹を守ってみせる!」
 がしっ
 自然と妹の両手を掴んで、硬く握り締める。
妹「お兄ちゃん…」
 妹の肩幅は俺の半分にも満たないんじゃないかと思えるくらい細い。
 それに、筋肉が全くついてないんじゃないかってぐらい、やわらかい。
妹「あっ…」
 俺のまっすぐな視線に物怖じしたのか、妹がうつむく。
 …な、なんだ…その。
 妹とはいえ、自然にした行動とはいえ、なんだか照れくさい。
 いつもと違う距離感に意識してしまう。
妹「え、えっと…」
 いつもの強気な妹が、細い声で困惑を表している。
 これぐらいのボディタッチ、昔はしょっちゅうやってたじゃねぇか!?
 …このままではやばい。
 …どうにかせねば。
 …やばいやばいヤヴァイ。
妹「うぅ…」
兄「ま、まぁ、その、あれだ」
兄「早速色々試してみよう」
兄「な?」
妹「え?う、うん…」
妹「どう…する?」
 不安げな瞳で、上目がちに俺を覗き込んでくる。
 どうするって…俺が聞きたいわ。
 さぁ、どうする…!?

 ネコミミを引っ張る or ネコミミを撫でる

兄「よし」
兄「ちょっとネコミミをこっちによこせ」
妹「はいにゃ」
 ピンと立ったネコミミが、俺の目の前に現れた。
 ふさふさしてて、いと可愛いらしい。
兄「じゃあ」
兄「遠慮なく」
 俺はネコミミに手をかけると、大根を引っこ抜く勢いで引っ張った。
 ぐいっ!
妹「ひぎぃぃぃぃぃいぃいいっ!!!」
妹「いたいぃぃぃぃぃいいぃい!!!」
兄「ぬうっ、抜けないっ!」
兄「敵はなかなか手ごわいな!」
妹「いたいいたいいたいいいい!!!」
兄「改革に痛みはつきものだってさ!」
妹「無責任すぎるにゃぁぁっぁああ!!」
兄「…ふぅ」
兄「つかれた」
妹「……」
兄「…大丈夫か?」
妹「この世の終わりを感じたにゃ…」
兄「そこまで…?」
 どうやら、ネコミミは弱点らしい。
妹「ぐすん」
 …それに、よく見れば妹は、涙を浮かべてシクシク絶望しているじゃありませんか。
兄「正直…すまなかった」
 …ちょっとやりすぎたかな。
 照れ隠しだったから、その場の勢いでやってしまった。
兄「手が勝手に動いちまって、つい」
兄「しかたがなかったんだ」
兄「こうするしかなかった」
兄「他にすべがなかった」
兄「しょうがなかった」
妹「ぜんぶ言い訳にゃ」
兄「言い逃れともいうな」
妹「分かっててやるから、お兄ちゃんは最低なんだにゃ」
兄「最低…」
兄「がーん」
妹「ちょっとは私をうやうやしく扱ってくれてもいいはずにゃん」

 わかった or わからない

兄「わかった」
兄「がんばるよ」
妹「…珍しく、素直」
兄「要は、ネコミミをやさしく引っ張ればいいんだな」
妹「ネコミミを引っ張るという思考から脱却するにゃあ」
兄「…え?」
兄「でも…どうしたらいいんだ」
兄「他にネコミミを引っこ抜く方法が思いつかない…」
妹「まず、引っこ抜くという思考をどうにかするにゃ」
兄「えぇっ?」
兄「ううーむ」
兄「うぬぬぬぬぬぬ」
兄「…」
兄「難易度高ぇぇぇええ」
兄「一歩目でいきなり死亡とか、最初の町から出る方法が分からないとか」
兄「そんなレベルの難易度じゃねぇえええ」
妹「ゲームの話と現実を一緒にするほうがおかしいにゃ」

 悪魔を頼る or 神を頼る

兄「そうだ!」
兄「きっと悪魔さんならなんとかしてくれる!」
妹「…悪魔?」
妹「悪魔の知り合いなんているのかにゃ?」
妹「エロエロエッサイムさん?」
 今の発言が、なんだか卑猥に聞こえるのは俺だけだろうか。
兄「いやいや違うから」
兄「ほら、妹いってたじゃん」
兄「赤魔術は悪魔を使う魔術だって」
妹「…にゃ?」
妹「…悪魔?」
妹「あぁ、ちがうにゃ。」
妹「悪魔じゃなくてデーモンにお願いするんだにゃ。」
 デーモンと…悪魔…?
兄「違いが分からんぞ」
妹「悪魔はそのまま悪い奴らのことにゃ」
妹「デビルともいうにゃ」
兄「おう」
妹「だけど、デーモンは基本的に良い事をしてくれるにゃ」
妹「私の願いを聞いてくれる、いい奴らなんだにゃ」
兄「…ふむふむ」
妹「わかってくれたかにゃ?」
兄「…つまり」
兄「善悪で区別されてるんだな?」
妹「まぁ、めんどくさいからそれでいいにゃ」
妹「本当は、もっと色々あるんだにゃ」
兄「たとえば?」
妹「デビルはコーラ派で、デーモンはペプシ派にゃ」
兄「めっちゃ庶民的な差やな」
妹「他にも色々あるにゃ」
妹「デビルは豊満な女性の方がすきだけど、デーモンは細身で引き締まった体が好みらしいにゃ」
兄「えっ…」
 俺はどちらかというと、デーモンと趣味が一緒だな…
 …って、そんな問題じゃなかったな。
妹「デビルはマクド派で、デーモンはマック派だし」
妹「デビルはきのこ派で、デーモンはたけのこ派にゃ」
兄「…そりゃ」
兄「対立するわな」
妹「そうにゃ」
妹「デーモンとデビルは昔から仲が悪いにゃ」
妹「多分、デーモンが人に親切にしてくれるのは、デビルの嫌いに反発してるからにゃ」
兄「…つまり」
兄「赤魔術は、デーモンとデビルの対立構造ありきで成り立ってるわけだな」
妹「ぶっちゃけちゃうと、そういう事になっちゃうかにゃ」
兄「じゃあ…」

  デビルを倒す or デーモンを頼る

兄「…もしかしたら、デビルを倒せば、ネコミミが治るんじゃないか?」
妹「なんでデビルかにゃ?」
兄「だって、デーモンは人に悪さしないんだろ?」
兄「だったら、ネコミミをはやすなんて迷惑な事をするのは、デビルなんじゃねぇの?」
妹「にゃるほど」
妹「お兄にゃんにしては、なかなか感がするどいにゃ」
兄「見直していいぜ」
妹「その傲慢さが無くにゃったら考えるにゃ」
兄「赤魔術には、デビルの倒し方はないのか?」
妹「にゃーん」
妹「どうだろ」
兄「教科書に書いてないかな」
妹「赤魔術講座Ⅰでは覚えがないにゃ」
兄「そうか…」
妹「デビルと戦うとにゃると、戦争になるんじゃにゃいかにゃ」
兄「戦……争…?」
妹「小規模のデビルとデーモンの戦いが、どんどん広がり連鎖が連鎖を呼んで」
妹「いつの間にか全面戦争ににゃって」
妹「デビルもデーモンもしょっちゅう人間に干渉してるから」
妹「世界大戦にも発展しかねないにゃ」
 …なんて迷惑な。
 まさかかつての世界大戦は、きのこ派とたけのこ派の対立から始まったのであるまいな。
妹「デビルとデーモンは常に一触即発状態にゃから」
妹「ちょっとした刺激があると、油に火をかける如くに燃え上がってしまうにゃ」
兄「じゃあ、どうすりゃいいんだ」
兄「デビルを倒そうとすると、それが原因で戦争が起こるかもしれない」
妹「…そもそも、デビルを倒す方法がわからんにゃ」
妹「それに、このネコミミがデビルのせいとも決まったわけでもにゃいにゃ」
兄「そりゃそうだが…」
妹「術に失敗したペナルティにゃと思ってたけど」
妹「ちょっと、デーモンさんに相談してみるにゃ」
兄「なんだそりゃ」
兄「そんなことできるのか」
妹「らくしょー」
妹「にゃん♪」


 
妹「タリスマンが描けたにゃあ」
 A4のコピー用紙に、油性ペンでチロチロ描かれたタリスマンとやら。
 本当にこんなので悪魔を呼べるのだろうか。
 …というか、いまだに赤魔術とやらを信じることができない。 
兄「そのにょろにょろした文字とか絵で何がかいてあんだ?」
妹「デーモン様きてください私は清い心を持った人間です。どうかおねがいします。お願いします」
妹「…みたいにゃ事が延々切々と描かれているにゃ」
兄「ふーん」
兄「清い心ねぇ」
兄「なるほどなるほど」
妹「にゃにが言いたいのか、なんとにゃく分かるにゃ」
妹「いちいち嫌味ったらしいお兄ちゃんは、清い心で許してあげるにゃ」
妹「でも、デーモンは悪い人の元にはあらわれないんだにゃ」
兄「…妹は、そのデーモンとやらに会ったことはあるのか?」
妹「一応初級術士の資格もってるのにゃから」
妹「デーモンさんと会って、簡単なお願いを聞いてもらわないと、初級術士にはなれないのにゃ」
兄「そっか…」
妹「えっへん」
兄「…どうも、すごいのかすごくないのか分からんな」
妹「そうなのにゃ?」
兄「…本当のところ、まだ信じられないんだ」
兄「赤魔術なんて、やっぱり詐欺商法で」
兄「デーモンやデビルなんて存在しないんじゃないか」
兄「ネコミミも、本当は良く出来た作り物なんじゃないかって」
兄「…やっぱり、よくできた夢なんじゃないかって」
兄「どうしても、思っちゃうんだ」
妹「心配しなくても、すぐに赤魔術が存在する証拠を見せてあげるにゃ」
兄「…なぁ」
妹「なんにゃ?」
兄「なんで、赤魔術を習おうと思ったんだ?」
妹「…ふぇっ!?」
妹「え、えーっと…」
兄「…?」
妹「うー……」
妹「あー……」
妹「……」
 気まずい空気だ。
 どうやら俺は、答えにくい質問をしてしまったらしい。
 …でも、こんな、誰もが疑問に思うような質問に答えられないのは、おかしい。
 昨日妹が使ったっていう魔術も、詳しくは話してこなかった。
 妹が何かを隠したがっているのは、間違いなさそうだ。
 …が、どうしたものか。

 謝る or 聞き出す

兄「ごめん」
妹「…え?」
兄「答えにくい事聞いちゃったな」
兄「どうしても、心配でさ…」
兄「妹も、もう子供じゃないのに…自分の事ぐらい自分で決めれるのに放って置けなくて」
兄「悪い癖だからさ…そろそろ妹離れしないとだめだな、俺」
妹「そんなことっ!」
妹「お兄ちゃんに心配してもらえるのが、嫌なわけないにゃ」
妹「心配させるような、私がだめにゃんよ…」
 ポロリ。
 妹の瞳から涙がこぼれた。
妹「わたし、だめだめ妹…」
兄「そんなこと無い」
兄「こんなこと言われて嫌かも知れないけど…」
兄「妹は、俺にとっては、最高の妹だよ」
妹「お兄ちゃん…」
妹「…へへっ」
妹「そんなことさらっといっちゃって…」
兄「駄目だったかな?」
妹「ずるいにゃ…」
兄「ごめん」
妹「うぅん…いいにゃ」
 そう言って涙を指で軽く撫でた妹は、ニコッと笑顔を俺に向けてくれた。
 きっと、無理してる。
 でも、きれいな笑顔だな、と思う。
妹「…ねぇ、ひとつお願いしてもいい?」
兄「デーモンでも聞いてくれないお願いかな」
妹「にゃぅ…いじわる」
兄「はは、冗談だよ」
妹「…うぅん、やっぱり、お兄ちゃんじゃなきゃ駄目にゃ」
妹「…ねぇ」
妹「ぎゅっ、ってして欲しい」
 言い終わると、妹は真っ赤になってうつむいた。
 こういうところ、すごく可愛いと思う。
 それに、こうやって甘えてきてくれるのが、すごくうれしい。

 いいよ or 条件がある

兄「いいよ」
兄「こっちおいでよ」
妹「…うんっ!」
 ぎゅっ…
 妹の体温を全身に感じる。
 これくらい、平気だって思ってた。
 妹と触れ合うなんて、それこそ妹が生まれたときから、よくあった事だったから。
 …でも、こんなにドキドキして
 こんなにも胸が痛くなるなんて、全然予想してなかった。
 さっき妹の肩を掴んだ時だって、こんなにもドキドキしなかった。
妹「あっ…」
兄「えっ…駄目だった?」
妹「う、ううん…」
妹「ちょっと、驚いちゃって…」
兄「あのさ…」
兄「…いろんな事さ、話したくなったら話してくれていいし」
兄「無理に話さなくていいよ」
兄「俺、見守ってるだけでも十分だし」
妹「…ありがと」
 そういうと、妹は目を閉じて、頭を俺の胸に預けた。
 それまで固まっていた妹の身体が、スッと緩んでいくのが分かる。
 それが、ちょっとうれしい。
 なんだか、うれしさの行き場が無くて、思わずネコミミのはえた頭を撫でる。
妹「にゃっ…」
 ひと撫で毎に願い事をするように、ゆっくりと撫でた。
 妹の髪の毛の匂いが、撫でるたびに俺の鼻腔まで運ばれてくる。
 あのシャンプーの匂いだ、って、家族だから分かるけれど、ひと嗅ぎする毎にドキドキが増える。
 この時間が永遠に続かないかな、なんてべたな言葉が頭に浮かんだけれど、カットの声は意外と早くかかった。
妹「はずかしいぃ…」
兄「あ、ごめん」
 妹の言葉がスイッチとなって、つい身体をグイッと引き離してしまった。
妹「あっ…」
 顔を真っ赤にしてる妹。
 こういう時だけ、すごくしおらしい。
 それが、可愛い。
 もう一度、すぐにでも抱きしめたい。
 でも、口実がない。

 我慢する or 告白する

 勢いでこのまま、もう一度抱きしめてしまいたい。
 でも、心のどこかで鳴っている警鐘が、俺を引き止める。
 勢いで非日常的な距離感に飛び込むのはよくない。
 妹が大事だから、もうちょっと冷静になりたい。
兄「どうだった?」
兄「こんなんでよかったのかい?」
妹「うん…」
妹「勇気…もらった」
妹「ありがと…」
 …勇気。
 妹は今、勇気が必要な状況なのか?
妹「じゃあ…はじめようかにゃ」
兄「お、おう…」
 妹は部屋のカーテンを閉め始めた。
兄「どうして閉める必要があるんだ?」
妹「デーモンは、太陽の光を嫌うんだにゃ」
兄「へぇー」
妹「じゃあ、蛍光灯を消すにゃ」
兄「う、うん…」
 カチリ。
 電気が消える。
 カーテンが遮光性になっているので、部屋は暗闇になった。
 妹の存在が、輪郭すら見えない。
 …たしか、写真部の部室にあった暗室が、これくらいの暗さだった。
兄「…部屋を改造したな?」
妹「てへへ」
兄「カーテンを閉めるだけで、完全に暗闇の空間にするなんて」
兄「すごい情熱だな」
妹「…じゃあ、はじめるにゃ」
 俺の質問には答えないで、さっそくモゾモゾ動き出した。
 シュル。
 高い音が暗闇に響く。
 シュ…シュルシュル…。
 普段は意識しないけれど、よく聞く音だ。
兄「えっ…もしかして…」
兄「今、服脱いでるのか!?」
妹「へへへ…」
妹「ばれたかにゃ」
兄「なんでっ!?」
妹「デーモンを呼ぶ時は、絶対に生まれた時の姿じゃなきゃ駄目なのにゃ」
妹「じゃないとデーモンはやってこないにゃ」
 勇気って…この事か?
兄「そ、それを早く言えっ!」
兄「お、俺…部屋からでるっ!」
妹「まって!」
妹「ごめん…嫌かもしれないけど」
妹「そこにいて…」
兄「……」
兄「…わかった」
 下心からじゃない保障はないけれど、妹が切実な声を出していたから、留まった。
 俺はただ、見守るだけにしよう。
 さっき、妹にそう言ったばかりじゃないか。
 …衣擦れの高い音が鳴り止んで、いくらかの時間が経った後、
 妹が小声でモゴモゴと何かをしゃべり出した。
 よく聞き取れない。
 おそらく、デーモン召還の呪文なのだろう。
 二分ほどしてから、詠唱は同じフレーズの繰り返しになった。
妹「ツーイスンュキドウュジアリ」
妹「ツーイスンュキドウュジアリ……」
 妹がこのフレーズを50は繰り返したと思った頃、急に俺の身体に変化が訪れた。
 目を回した時の、気持ち悪い感覚が俺を襲った。
 ただ、不思議と身体はふらつかない。
 妹に大丈夫か、と声をかけたかったが、詠唱の邪魔はできないと思いとどめた。
妹「ツーイスンュキドウュジアリ」
妹「ツーイスンュキドウュジアリ」
妹「ツーイスンュキ……」
妹「ツー……」
妹「……」
妹「……」
 ……。
 …。
 気付けば、何も聞こえなくなっていた。

 妹を呼ぶ or 妹を待つ

兄「妹ぉおぉおおっ!!」
 …。
 ……。
 返事が無い。
兄「どうしたんだ、妹っ!!」
 やはり返事はなかった。
兄「妹ぉぉおおおっ!」
 妹の元に駆け寄ろうとする。
 しかし、意識だけが駆けていて、身体が駆けている感触がしない。
 …というか、全身の触覚が全く無い。
兄「どう…なってんだ…?」
 間違いない。
 ここは現実には無い異空間だ。
兄「妹っ!平気なのか!?」
兄「頼む、頼むから、返事をしてくれっ!」
 声はむなしく暗闇に消える。
 焦りが胸から熱いものをこみ上げさせる。
 かつて無い不安が俺を襲った。
 異常な不安なせいで、思い出さなくていいことも思い出す。

妹「術に失敗したり、術を悪い事につかったら、悪いことが起きるっていうのは書かれてるんだけど…」

兄「もしかして失敗したのか!?」
兄「こんなわけの分からない現象が起きるくらい、リスクが高いのか!?」
兄「勇気って…本当はこのリスクと戦うことだったのか!?」
兄「妹ぉぉっ!!」
兄「こたえてくれぇえええっ!」
 こんな事になるくらいだったら、やめさせた。
 後悔と不安とが混ざって、感情がグチャグチャになる。
 触覚が無いので涙が流れているかは分からないが、心は泣いていた。
 「…お兄ちゃん」
兄「妹っ!」
兄「どこだっ、どこにいるっ!?」
兄「無事なのか!?」
 「…だめっにげてっ」
兄「にげて…って、できるわけないだろ!」
兄「どこにいるんだっ!」
 …。
 ……。
 …返事が返ってこない。
 刹那の安堵が、逆に不安を高め、俺の焦りは一気に加速した。
兄「いもうとぉぉおおおおおぉぉぉお!!」
 …。
 ……。
 「おにい、ちゃん」
兄「妹!?」
 「こっちに、きて」

 行く or 行かない

兄「こっち?」
兄「こっちって!?」
 「こっち、だよ」
 正面から聞こえた気がした。
 感覚のない脚を動かして、意識を正面に向けた。
妹「ばぁっ!」
兄「うぉっ!?」
妹「あはははははははっ!」
兄「な、ななっ!?」
兄「…もしかして、冗談だったのか!?」
妹「あはっ、あははははっ」
兄「わ、悪い冗談だっ、しんぱいっしたんだぞ…っ!」
兄「本気で……本気で心配…」
妹「あはっあはは…ひひひいいひっ」
兄「本気で…」
妹「ぷふふふふっふうっううっ」
兄「……何だよこれ」
兄「どうしたんだよ!?」
兄「なぁ!?」
兄「妹っ!!」
妹「ぷふーーっ」
兄「…っ!」
妹「ふふっ…残念。妹じゃないよ」
兄「は…?」
妹「こんにちは。ネコミミです」
兄「ネコミミ……?」
兄「何言ってんだ…意味分かんな…」
妹「分かってるでしょ?」
妹「私はネコミミ」
妹「さっき、妹のスピリッツを完全に乗っ取ってやったわ」

 信じない or 信じる

兄「嘘だっ!!!!」
兄「妹…悪い冗談はよせ」
兄「夕飯作ってやるから…お前の好きなパスタにしよう」
兄「…だから、もうこんなの、やめよう!」
妹「ぷふっふふふふ」
妹「ふふふふっ」
妹「本当に楽しいねぇ」
兄「…」
兄「俺は、妹を信じてるんだ」
妹「…じゃあ勝手にしなよ」
 …怒りがこみ上げてくる。
 信じているはずの存在に、苛立っている。
兄「糞ッ!」
妹「ふふははっ」
妹「見てて楽しいから、ちょっと解説してあげる」
兄「……やめろ」
妹「私はね、デビルの眷属なのさ」
妹「妹が力を貸して欲しいっていうから、貸してあげた」
妹「その代償として、スピリットをいただいたのさ」
兄「…スピリット」
妹「魂さね」
兄「…っ!?」
妹「あんたも、今はスピリットだけの存在」
妹「身体の感覚がないだろ?」
兄「力を貸して欲しいって…妹は幸せを願って、赤魔術をつかったんじゃなかったのか!?」
妹「ふはっははっ」
妹「おめでたいね、ほんと」
兄「…なんだと」
妹「…いいよ」
妹「もっと絶望してほしいからね、教えてあげるよ」
妹「あいつが昨晩行った儀式で願ったのは…」
妹「お兄ちゃんと相思相愛になる」
兄「…っ!?」
 妹が…俺を…?
妹「わらっちゃうよね」
妹「そんな卑しい願い事で、デーモンが来るはず無いのに」
妹「デーモンのふりして願い聞いてやったら」
妹「そりゃもう喜んだのなんの」
妹「ぷふっ」
妹「ふふふふふっ!」
兄「違う!」
兄「…卑しい願いなもんか」
兄「人と想いを一つにしたいと願うことの、何処が卑しいんだ!」
妹「あら…」
妹「お兄さんまで自覚が無いんだねぇ」
兄「自覚…?」
妹「ほんっっっとに、面白い兄妹だよ。あんたらは」
妹「…でも、自分達が兄妹っていう自覚…あんの?」
兄「…っ!?」
妹「デビルはねぇ」
妹「兄妹が大好きなんだよ」
兄「……?」
妹「それが、デーモンの奴らときたら、弟姉好きでいやがる…」
妹「あーーっ、もう姉とかあり得ないだろ常識的に考えて!」

 …え? or 姉弟最高だろが

兄「……え?」
妹「お兄ちゃんの良さが分からないとか、意味わかんない!」
妹「弟のいいところとかもうさっぱり!一生年下でいいわけ!?」
妹「年下の男といちゃいちゃ出来るかっつーの!」
妹「やっぱ大人なお兄ちゃんに甘えてしかるべきっしょー!!」
兄「…うー」
妹「ふぅ…ふぅ…」
兄「えっと…」
妹「…どう?」
妹「わかった?」
兄「…あなたの頭がおかしいって事は」
妹「…あ、そう」
兄「……。」
妹「じゃあ、もう行こうかな」
妹「なんか冷静になっちゃったみたいだし。…飽きた」
兄「…一つだけ聞かせてくれ」
兄「妹の願いは叶ったのか?」
妹「…はぁ?」
妹「叶ったから私が出てきたんだけど?」
兄「そうか…」
兄「わかった」
妹「…もう満足?」
兄「いや」
兄「あと、もう一つ」
 
 そういって俺は、妹に口付けをした。

妹「……っ!?」

 好きだ or さよなら

兄「妹、好きだ」
妹「お兄ちゃん…っ!」
妹「私も…お兄ちゃんのこと、大好き…っ!」

 漆黒の空間が、白に染まっていく。
 目の前には、ネコミミの無い妹。
 …やっと
 …やっと結ばれた。
 長かった。
 ……。
 …ネコミミ。
 お前は一つ、大切な事に気付いていなかった。

 「この白の力は…デーモンッ!?」
 「なぜだ…っ」
 「なぜデーモンがこいつらに手を貸す…っ」
 「こいつらは兄妹で愛し合っているんだぞ…?」
 「清らかな心などではないはずだ」
 「それに…貴様らデーモンの大嫌いな兄妹っ…!」

兄「兄妹で愛し合っている事が、清らかではない理由にはならない」
兄「お前は妹の清らかな心と、愛し合う力に負けて、妹の魂から追い出されたのだから」
兄「…それに」
兄「妹には、ずっと隠していたけれど…」
兄「義兄妹なんだ」

 「……そうか」
 「お前らを餌にして、私はまんまとデーモンどもにおびき出されたというわけか…」
 「しかも、仲間に気付かれぬ、この空間で…」
 
兄「……」
兄「ごめん」
兄「俺は妹の事が大事だから」
兄「妹を守った」

 「…いいさ」
 「ちょっと…ひと…に…なる…のもたのし…かった…」
 「おに…ち…ん…」

兄「…ネコミミ」
兄「俺も、ちょっと楽しかった」
 空間が完全に白に変わる。
兄「…妹」
兄「帰ろう」
妹「うん」
妹「お兄ちゃん」


 夢をみている or 夢をみたくない


 …長い夢を見ているような気がする。

「……ぃちゃ…」

 あぁ、いつもの、あの声が聞こえる。

「……に…ちゃん」

 …もう…いやだ…。

「…きて…ねぇ、おきて…」

「…ねぇ!」

妹「お兄ちゃん、起きてったら!!」

兄「うぉっ!!!!」
兄「なななななななんんだぁぁ!」
兄「何がおこったぁぁぁ!!!」
妹「ねぇ、大変!大変なんだって!」
兄「…何が大変なんだっ!」
妹「私の顔見て!」

見ない or 見る

兄「…見たくない」
妹「…なんでよ」
兄「なんだか、面倒な事になりそうだから」
妹「なにそれ」
兄「 そんな気がする」
 俺は二度寝の体制に入って、妹の顔を意地でも見ないことに決めた。
兄「ずっと、嫌な夢を見てたんだよ」
兄「…もう一度寝なおして、いい夢を見ます」
妹「…ねぇ」
妹「ねぇったら」
兄「……」
妹「ほんとに寝ちゃったの?」
兄「……」
妹「…ちぇっ」
妹「せっかくお化粧したのに…」
兄「化粧!?」 
 俺は反射的にガバッと起きた。
兄「ネコミミは!?」
妹「ネコミミ…?」
妹「…あたま大丈夫?」
兄「…あれ」
兄「なんだったっけな…」
妹「変なお兄ちゃん」
 ずいぶんと長い間夢を見ていた気がするんだけれど、『夢を見ていた』という事意外に、思い出せることが無い。
 ネコミミ…?
 なんでネコミミ…?
妹「…もしかして、浮気?」
兄「そんなわけ無いだろ」
兄「妹は最高の恋人だよ」
妹「むぅ」
妹「いまいち信用できないよ」
妹「だって、私のお化粧、何にも言ってくれないし」
兄「…あ、あぁ。ごめん」
兄「きれいになった思う」
兄「…でも、ちょっと化粧するには早いんじゃないか?」
妹「いいのっ」
妹「…もう、お兄ちゃんってば、女心わってないんだから」
妹「…ちょっとは、お兄ちゃんに相応しい妹になろうと努力してるんだからね」
兄「何言ってんだ」
兄「…でも」
兄「あ、そうだ…ちょっと来て」
妹「ん?」
 ちゅ
兄「好きだよ」
妹「うん」
妹「私も大好き!」
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【2009/10/24 01:17 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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